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人間は結構不確実なのです。それと上手く付き合わないとダメなのです 最近では、高速ビデオやスウィング分析ソフトなんぞを使って、恰も科学的であるかのようなプレゼンテーションをしているレッスンが流行ってなんかいます。 でも、人間はそもそもかなり不確実な生き物なのです。ですから、角度がどうとかこうとか、形がどうじゃらこうじゃら言ってみたところで、結構何の意味も無いことがほとんどなんですよ。 巷に溢れるゴルフレッスンでは「毎回同じ形にしろ!」などと、人間が随分と緻密なことができるような前提でお話を進めています。 本当はそんな前提なんぞを考慮して言っているほどレベルは高くないのでしょうが・・・何故なら、考慮しているのなら必ず明記をするはずですし、そうであるならば、もう少し論理展開が正しく行われているでしょうし、例外規定も明確になっているはずですからね。 それが存在しないってことは、考慮していないってことですよね。 また、論理展開のための制限要素が定義されていないということは、そもそも論理展開になっていないということなのですからね。 さて、少し科学的なことをかなり噛み砕いて説明しましょう。 NBA(National Basketball Association)のバスケットボール選手のパフォーマンスの分析や、オリンピックで金メダルを獲ったマラソン選手とクロスカントリースキー選手の動作分析の研究のお話。 細かいデータ云々は割愛しますが、結果をまとめると: バスケットボール選手の研究では、10回のフリースロー動作を分析すると、 ①各トライアル間の身体部位の動き(角度、形、スピードなどなど)のバリエーション(つまり、毎回同じ事をやっているのかどうかということですね)はとても大きかったのです(つまり、一投一投、細かい部分の動きはかなりバラバラだったってことなのです)。 にも関わらず、 ②放たれたボールの軌跡は統計的有意差は存在しない(つまり、ほとんど同じ軌跡だったってことです)。 マラソン選手とクロスカントリー選手の研究では(実際のオリンピックでのパフォーマンスの他に、トレッドミル上の動作も分析しました)、連続した20のステップを分析したところ、 ①各ステップ間の身体部位の動きのバリエーションはとても大きかったのです。つまり、同じ動きではないということです。 にも関わらず、 ②移動スピードやステップの幅には統計的有意差は存在しない(つまり、ほとんど同じように進んでいたということなのです)。 バスケットボールもマラソンもクロスカントリースキーも、どれもゴルフのように先端に長くて重たい、つまり暴れやすい道具を持って行う動きではないのですから物理的に正確に実行しやすい類の動きだということができます。 にも関わらず、インタートライアル或いはインターステップの細かい部分の動きはバラバラだってことです。 しかし、一方、タスクとしてのアウトプットはとても正確性と反復性が高く、言ってみれば毎回同じ結果を引き出しているということなのです。 これが人間の進むべき方向性であり、これこそが人間のコーディネーションの方法なのです。 えっ?まだ解りませんか? ゴルフでは、細かい部分の動きをいつも同じようにしなさいというのが当たり前のように語られていますし、ある意味ではそれが前提となってレッスンが行われています。 そして、多くのゴルファーがゴルフはそういうものなのだと納得していますよね。 世界の一流と呼ばれる選手(そりゃそうです、NBAとオリンピックの金メダリストですからね)が、それもゴルフよりは物理的に単純な動きをしているスポーツにおいて、部分部分はバラバラな動きをしているのに、ゴルファーは一般のアマチュアーでさえも、もっと緻密なことを(ランダムに気づいてしまった部分のランダムに選択した時の形としてという意味ですが)しなければならないと考えているのですよ。 にも関わらず、タスクとしてのアウトプット(ショットの結果ですね)は散々たるものなのはどうしてなのでしょう? 答えは簡単なのです。 やり方が間違っているのです。求めるものが間違っているのです。努力を注ぐところが意味のないことだということなのです。 何でもそうですが、物事と言うのはどういう見方をするかによって、ことごとく異なるものに見えるものです。 ゴルフではほとんど全てと言って良いほど「結果として表面上に現れる形を模倣することが大切」という見方をしているのですが、実際に他のスポーツのエキスパートのパフォーマンスを科学的に分析すると、そうした見方が全く意味のないことなのだということがわかるのです。 それでもまだ、あなたは結果の形ばかりを模倣することにこだわりますか? |
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